手術が終わって「やっと治療が終わる」と思ったのに、「まだ放射線治療が必要です」と言われて戸惑ったり、不安に感じていませんか?
実際、同じような気持ちを抱える方がたくさんいらっしゃいます。
この記事を読めば、『乳がん』の放射線治療の目的や注意点、治療に前向きに取り組むためのポイントが分かり、不安が少しでも和らぐはずです。
結論から
乳がんの放射線治療では、照射している側の乳房の皮膚炎(放射線皮膚炎)に注意してください。
乳房照射の目的
乳房照射(放射線治療)の目的は、手術後に乳房やその周囲に残っている可能性のある目に見えないがん細胞を死滅させ、乳房内や周辺の再発を防ぐことです。特に乳房温存術(部分切除)後は、放射線治療を併用することで局所再発率を大きく減らすことができます。また、再発を防ぐことで生存率の向上にもつながります。乳房全切除後でも再発リスクが高い場合には、胸壁やリンパ節領域に照射を行うことがあります。
乳がんは比較的浅い個所にあるがん
深いところにあるがんは、そこの近くに放射線がいっぱい当たります。乳房のように、浅いところにあるがんは、皮膚にも放射線が多く当たります。
そのため、皮膚にも炎症が強く出ることがあります。これを放射線皮膚炎といい、症状としてやけどのように赤くなったり、ひどいときはただれるような状態になります。
適切な保湿や軟膏を使用することで、症状を和らげることが可能になります。
ただし、放射線治療を行う時に軟膏などが塗ってあるとかえって症状が悪化する場合があるので、塗るタイミングなどは、医療スタッフに確認してください。
左乳がんでは、息を止めて照射する場合もある
左の乳房は、右に比べて心臓が近いです(心臓は左に寄っているため)。
乳がんの患者さんは比較的、若い方が多いため、心臓に放射線が照射されると、数年後、または数十年後に、心臓に副作用が発生するリスクがゼロではありません。
そのため、左乳がんに関しては、呼吸によって、乳房と心臓を遠ざけた状態で放射線を照射する手法があります。
これを深吸気域止照射(Deep inspiration Breath Hold:DIBH)といいます。
これを行う場合は、しっかりと毎回同じように、息止めをする必要があります。
毎回、息を止める量が安定しないと、かえって、正しい位置に放射線が当たらなくなることもあるので注意が必要です。
左乳がんの放射線治療において、安定して息を止めることが出来るのであれば、DIBHの提案があるかもしれませんが、患者様のしっかりとした息止めの協力が必須となります。
まとめ
・手術後の放射線治療は、目に見えないがん細胞を死滅させ、再発を防ぐために重要
・乳房温存術後は特に放射線治療が必要
・浅い部分にある乳がんは皮膚にも放射線が当たりやすく、放射線皮膚炎が起こることがある
・左乳がんでは心臓への影響を減らすため、息止め照射(DIBH)が行われる場合がある
・息止め照射を行う場合は、毎回安定した息止めが重要
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